迷いを断つには“毎月の数字”が必要だ
事業再生は、今日の判断が明日の命運を決める戦いです。
年に一回の決算だけでは遅すぎる。赤字を早期に食い止め、改善策を即実行するには、毎月の経営状況を正確に把握する月次決算が不可欠です。
月次決算を導入しない中小企業には、次のような共通課題があります:
- 月次試算表がない、または遅れて作られている
- 部門別損益や在庫など細かい管理会計ができていない
- 数値を見ての即時判断ができず、対応が後手に回る
月次決算を導入すれば、異変の予兆を早期に察知し、改善アクションを取れる体制を持てるようになります。
月次決算の基本:何をいつやるか
月次決算は「1か月分の業績を確定させる」プロセス。主な流れとチェックポイントを下記にまとめます:
| ステップ | 主な作業内容 | チェックすべきポイント |
|---|---|---|
| 1. スケジュール確認・共有 | 各部門に提出期限を周知 | 書類提出ルールの徹底 |
| 2. 現金・預金残高確認 | 銀行通帳との整合性チェック | 差異の原因究明 |
| 3. 売上・売掛金の計上 | 請求書ベースで売上を確定 | 未請求・返品処理の確認 |
| 4. 経費の計上 | 各費用を正確に振替 | 仮払金や未精算経費の整理 |
| 5. 棚卸資産の確認 | 在庫実数との照合 | 棚卸差異の処理 |
| 6. 仮勘定・引当金の整理 | 仮受金・仮払金・引当金など調整 | 過年度修正の反映 |
| 7. 減価償却などの調整 | 月次分の償却費を計上 | 年次との整合性 |
| 8. 試算表の作成 | 損益/貸借/資金繰りの試算表 | 計画との差異分析 |
| 9. 分析・報告 | KPI・部門別分析と異常点抽出 | 数字に基づいた改善案づくり |
これらを翌月10日までに完成させる目標を掲げている中小企業もあります。
再生局面で月次決算をどう活用するか
✅ 異変の“予兆管理”として使う
月次の売上減少、原価上昇、資金繰りの悪化…一つひとつの変動が早期予兆になり得ます。中小企業庁の報告でも、月次ベースの数値把握は早期モニタリングの要とされています。
✅ 計画と実績の乖離を即時修正
事業再生では、立てた計画と実績にズレがあると致命的。毎月の乖離(かいり)を把握し、「なぜズレたか」「次月どう修正するか」を即判断するサイクルを回します。
✅ 部門別・担当別の責任範囲を見える化
どの部門が赤字になっているか、どの営業が貢献しているかを月次で把握。問題部門には早期手を打てます。
✅ 金融機関・保証機関への信頼材料に
月次決算速報や試算表を提示できる会社は、金融機関や信用保証機関からの評価が高まり、支援や融資を得やすくなります。
導入時に気をつけたいポイント
- 完璧を目指しすぎず、「経営判断に役立つ精度」でまずスタート
- 会計ソフトやクラウド型ツール導入で自計化(自社経理)を促進
- 定期的なレビューと改善を組み込む(前月の改善点を次月に反映)
- 担当者の教育と協力体制の確立。数字を見る目・解釈力を育てる
まとめ:月次決算は再生の“眼”となる
月次決算を導入・活用することで、赤字や資金繰り悪化の予兆を捉え、即行動に移すことが可能になります。
中小企業が“年次決算だけ”では間に合わない時代だからこそ、毎月の数字を武器としてください。
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