事業再生41 「借入返済の優先順位」をどうつけるか?複数債務を整理する判断基準とリスク管理


はじめに:複数の借入・支払い先を抱えたとき、優先順位の付け方が経営を救う

中小企業が再生局面に入ると、多くの場合、複数の金融機関や取引先への返済義務・支払い義務が重なることになります。

「どの借入を先に返すべきか」
「支払いを後回しにしていい先はどこか」

こうした判断を誤ると、信用を失う・資金ショートする・再生が頓挫するリスクが増します。

本記事では、複数の債務を抱える中小企業向けに、返済優先順位の付け方・リスク判断の観点・実践的な進め方を整理します。


目次

  1. 優先順位をつける意味と基本原則
  2. 優先すべき返済先の見分け方:5つの基準
  3. 優先順に応じた支払戦略
  4. リスク管理と見直しの方法

1. 優先順位をつける意味と基本原則

なぜ優先順位が必要か?

  • 資金が限られていると、すべてを満額返すことは難しい
  • 返済遅延やデフォルトが信用を失い、金融機関の支援を失う危険性
  • 流動性を守りながら、被害を最小化するため

基本原則

  • 法的義務の強い債務を優先する
  • 信用・継続性に直結する相手を守る
  • 利息負担が重い債務をできるだけ早く軽減する

これらの原則をベースに順位付けすれば、混迷の中でも筋の通った返済戦略が立てられます。


2. 優先すべき返済先の見分け方:5つの基準

以下の基準で、各債務をランク付けしていきます。

基準内容優先すべきケース
法的拘束力/担保設定の有無担保付き借入や保証人責任が伴う債務は優先度高抵当設定されているローン、債権回収リスクが強いもの
延滞ペナルティ・遅延利息遅れると利息負担が急増する支払遅延により利率が大きく跳ね上がるもの
信用リスク・取引関係取引先・信用保証機関・金融機関との関係性を重視信用を失うと業務に直結する相手への支払い
資金繰りへの影響度支払遅延が他支払いの連鎖を引き起こす可能性主要供給先や管理費用、従業員給与など
利回り・コスト負担金利や手数料が高い借入を早めに返済したい高金利ローン、短期借入などコスト重めのもの

この5つの基準を使って、債務をA〜Cランクなどに分類して優先順位を設定します。


3. 優先順に応じた支払戦略

Aランク(最優先)

  • 担保付きローン、保証債務、信用維持に直結するもの
    → これらは遅延が致命的な影響を与えるため、できる限り通常返済を継続

Bランク(次点)

  • 高金利・遅延利息率が高い債務
  • 支払遅延が許容される可能性のある支払先
    → 余裕ある月は減額返済または繰上返済を試みる

Cランク(後回し可)

  • 少額債務、利息負担が小さいもの
  • 支払猶予できる協力先の支払い
    → 方向転換の余地を残しつつ返済計画を維持

このようなランク分けを行い、毎月の資金配分を決めていくことが戦略的になります。


4. リスク管理と見直しの方法

  • 毎月見直し:資金繰り表・月次決算と照合しながら順位を更新
  • 交渉可能性評価:一部債権者とはリスケ交渉を併用
  • 支払遅延の“余裕枠”設計:予備資金を設定して一本化リスクを軽減
  • 透明性を保つ説明責任:金融機関や主要取引先には現在の状況を誠実に開示

まとめ

複数の債務を抱える中小企業にとって、返済の優先順位を正しく定めることは生死を分ける戦略です。
法的義務・信用リスク・金利負担などを基準に判断軸を設け、柔軟に順位を見直しながら資金配分を最適化しましょう。

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