事業承継43 承継準備に必要な「見える化」—経営情報・財務・人材の整理術


見えないものは引き継げない

葛飾区・江戸川区・墨田区・足立区の地域型中小企業では、「なんとなく手続き」や「勘・経験頼み」の経営をしてきた企業も少なくありません。事業承継を成功に導くには、曖昧な情報を明確にし、“見える化”された経営基盤を後継者に残すことが不可欠です。本記事では、経営情報・財務・人材の3領域に分けて、スムーズな承継につながる整理術をご紹介します。


目次

  1. なぜ「見える化」が承継の鍵となるか
  2. 経営情報の見える化:事業構造と指標整理
  3. 財務の見える化:数字で語れる体制をつくる
  4. 人材の見える化:能力・役割・後継候補を可視化
  5. 見える化ツール・実践ポイント
  6. まとめ — 見えるものが承継を支える

1. なぜ「見える化」が承継の鍵となるか

  • 曖昧な情報では後継者や金融機関、取引先から信用を得にくい
  • 承継リスク(誤認、対立、評価不整合など)を減らす
  • データに基づいた判断が可能になり、改善や改革もしやすくなる

2. 経営情報の見える化:事業構造と指標整理

① 事業ポートフォリオの整理

  • 主力事業・既存部門・新規部門を分け、収益・成長可能性を比較
  • 不採算部門や将来性の低い分野を予備的に抽出

② KPI(重要業績評価指標)の設定

  • 売上高、粗利率、営業利益率、顧客獲得数、リピート率など
  • 月次・四半期でKPIをモニタリングできるように整備

③ 顧客構造・取引先構造の可視化

  • 主要顧客・取引先の売上比率
  • 長期取引先、集中度の高さ、リスク分散状況の把握

3. 財務の見える化:数字で語れる体制をつくる

① 月次決算・キャッシュフロー表の作成

  • 毎月の収支・入出金を把握できる体制を整える
  • キャッシュ預金残高・流動比率・負債比率を定点観測

② 貸借対照表・損益計算書の精査

  • 過去3~5年分の推移を並べてトレンドを見る
  • 不良在庫・未収金・過剰設備などを洗い出す

③ 部門別/商品別採算表の作成

  • 各部門・商品ごとの収益性・固定費按分を明らかに
  • 赤字商品・部門の整理・撤退判断材料に

4. 人材の見える化:能力・役割・後継候補を可視化

① 社員能力マップの作成

  • スキル、経験、資格、強み・弱みを整理
  • 各役割に必要な能力と現有能力のギャップを把握

② 役割と責任の明文化

  • 組織図と職務記述書(Job Description)を整備
  • 各ポジションの責任範囲と権限を明確に

③ 後継候補のリストアップと育成計画

  • 候補者を複数名選出し、育成スケジュールを設計
  • 教育内容・ローテーション・OJTなどを計画に落とし込む

5. 見える化ツール・実践ポイント

  • クラウド会計ソフト:日次記帳・レポート出力で財務を見える化
  • BI(ビジネスインテリジェンス)ツール:KPIや複数データを可視化
  • Excelダッシュボード:少量データでも有効な可視化手段
  • 人事評価システム:スコア評価・目標管理で透明性アップ
  • 定例レビュー体制:月次・四半期レビューでデータを議論材料に

6. まとめ — 見えるものが承継を支える

承継準備には「見える化」が不可欠です。経営情報・財務・人材の各領域を整理して、後継者や関係者が信頼できる基盤を残しましょう。見えるものこそ、次世代経営への礎となります。

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