事業承継84📋 スモールM&Aの譲渡スキーム|株式譲渡・事業譲渡・会社分割の選び方
事業承継M&Aでは、「会社を売る」と一言で言っても、実際の方法は一つではありません。
代表的な方法には、株式譲渡、事業譲渡、会社分割などがあります。どれを選ぶかによって、契約、許認可、従業員、借入、税務、手続、買い手のリスクが変わります。
ここを曖昧にしたまま相手探しを始めると、買い手候補との話が進んだ後で「このスキームでは許認可が引き継げない」「不要な負債まで付いてくる」「従業員の同意が必要だった」といった問題が出ます。
中小M&Aガイドラインでは、第三者への円滑な事業引継ぎに向けて、中小企業向けのガイダンスや支援機関向けの留意事項が整理されています。M&Aは成約だけでなく、引継ぎ後に事業が続くことが目的です。
この記事では、事業承継の文脈で使われる主な譲渡スキームを、経営者が判断しやすいように比較します。
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1. スキーム選びで最初に見るべきこと
スキームを選ぶ前に、次の5つを確認します。
・会社全体を引き継ぐのか、一部事業だけか
・借入金や保証をどう扱うか
・許認可や契約を引き継げるか
・従業員の雇用をどう守るか
・売り手の手取額と税務がどうなるか
経営者が最初から法律用語を完璧に理解する必要はありません。大事なのは、「何を渡し、何を残すか」を明確にすることです。
例えば、会社全体を渡すなら株式譲渡が候補になります。不採算部門や不要不動産を外して事業だけ渡したいなら、事業譲渡や会社分割を検討します。
2. 株式譲渡の特徴
株式譲渡は、売り手株主が保有する株式を買い手に譲渡する方法です。会社そのものは継続し、会社が持つ契約、許認可、資産、負債、従業員との関係も基本的には会社に残ります。
メリット
・手続が比較的シンプル
・会社の契約や許認可が残りやすい
・従業員との雇用契約が継続しやすい
・買い手から見ると会社全体を取得できる
・売り手から見ると株式売却として整理しやすい
デメリット
・簿外債務や過去のリスクも会社に残る
・不要資産や不要事業も一緒に移る
・株主名簿や株券、過去の株式移動に問題があると止まる
・少数株主がいると調整が必要
・経営者保証や担保は別途協議が必要
株式譲渡が向くのは、会社全体をそのまま引き継ぎたいケースです。顧客・従業員・許認可・契約を大きく動かしたくない場合に検討しやすい方法です。
ただし、買い手は過去のリスクも含めて取得するため、デューデリジェンスが重要になります。
3. 事業譲渡の特徴
事業譲渡は、会社の中にある特定の事業や資産を選んで譲渡する方法です。
会社そのものを売るのではなく、譲渡対象を個別に決めます。
メリット
・必要な事業だけを譲渡できる
・不要な負債や資産を外しやすい
・買い手が取得範囲を限定しやすい
・不採算部門と採算部門を分けやすい
・会社に一部事業を残す選択もできる
デメリット
・契約や許認可の個別移転が必要になる場合がある
・従業員の移籍に調整が必要
・取引先の同意が必要になることがある
・手続や契約が複雑になりやすい
・消費税や税務の確認が必要
事業譲渡は、「会社全部は渡したくない」「一部だけ引き継いでほしい」「不採算事業を外したい」という場合に向きます。
一方、契約や許認可が自動で移るとは限らないため、取引先・行政・従業員への確認を早めに行う必要があります。
4. 会社分割の特徴
会社分割は、会社の事業に関する権利義務を他社に承継させる組織再編の方法です。
事業譲渡と似ていますが、権利義務をまとめて移しやすい点が特徴です。
メリット
・事業単位で承継しやすい
・一定の権利義務をまとめて移しやすい
・グループ内再編にも使いやすい
・承継前の整理に使える場合がある
デメリット
・会社法上の手続が必要
・債権者保護手続などの検討が必要
・労働契約承継の対応が必要になる場合がある
・小規模案件では手続負担が重いことがある
・税務上の適格要件など確認事項が多い
会社分割は、事業を整理してから承継したい場合や、複数事業の一部だけを切り出したい場合に検討されます。
ただし、スモールM&Aでは、手続コストや期間が重くなることもあるため、事業譲渡との比較が必要です。
無料相談は以下より受付中。
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5. 3スキーム比較表
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 会社分割 |
| 対象 | 会社全体 | 特定事業・資産 | 事業単位 |
| 契約 | 会社に残りやすい | 個別移転が必要 | 包括承継の検討 |
| 許認可 | 残る場合あり | 再取得・変更が必要な場合あり | 個別確認 |
| 従業員 | 雇用継続しやすい | 移籍調整が必要 | 労働契約承継対応 |
| 借入 | 会社に残る | 原則対象外にしやすい | 承継設計による |
| 買い手リスク | 過去リスクも取得 | 範囲限定しやすい | 設計次第 |
| 手続負担 | 比較的軽い | 中程度 | 重くなりやすい |
| 向くケース | 会社ごと承継 | 一部だけ承継 | 事業を整理して承継 |
江戸川区や足立区の中小企業では、複数事業のうち一部だけが収益源になっている会社もあります。その場合、株式譲渡だけでなく、事業譲渡や会社分割を比較すると選択肢が広がります。
6. スキーム選択の判断フロー
次の順番で考えると、判断しやすくなります。
1. 会社全体を渡したいか
YESなら株式譲渡を検討します。
NOなら事業譲渡または会社分割を検討します。
2. 不要な負債やリスクを外したいか
YESなら事業譲渡が候補になります。
ただし、契約や許認可の移転可否を確認します。
3. 事業単位でまとめて移したいか
YESなら会社分割を検討します。
ただし、会社法、債権者、労働契約、税務の手続を確認します。
4. 手続コストと期間をかけられるか
かけられない場合は、シンプルな株式譲渡や事業譲渡を優先することがあります。
5. 買い手がどのリスクを受け入れられるか
買い手が過去リスクを嫌う場合は、株式譲渡より事業譲渡を希望することがあります。
7. スキーム選びの失敗パターン
失敗パターン1:株式譲渡で進めたが、少数株主が見つかった
株主名簿が古く、過去の株式移動も不明確だったため、買い手が不安を感じて交渉が止まりました。
対策は、早い段階で株主名簿、定款、議事録、過去の株式譲渡記録を確認することです。
失敗パターン2:事業譲渡で契約が移らなかった
主要取引先との契約に譲渡制限があり、相手先の同意が必要でした。クロージング直前に判明し、予定が崩れました。
対策は、主要契約を先に棚卸し、同意要否を確認することです。
失敗パターン3:会社分割の手続期間を見誤った
会社分割を使えば整理できると考えたものの、債権者対応や従業員対応に時間がかかり、希望時期に間に合いませんでした。
対策は、効力発生日から逆算して、公告・通知・説明・同意の要否を整理することです。
8. よくある質問
Q1. 小規模企業なら株式譲渡が一番簡単ですか?
比較的シンプルなことは多いですが、株主、借入、契約、許認可、簿外債務に問題があると簡単ではありません。
Q2. 事業譲渡なら負債を引き継がなくて済みますか?
対象範囲を限定しやすいですが、契約内容や実態によって確認が必要です。取引先や金融機関への説明も必要になることがあります。
Q3. 許認可はどのスキームなら引き継げますか?
許認可ごとに異なります。株式譲渡で会社に残る場合もあれば、役員変更届や再取得が必要な場合もあります。必ず所管官庁へ確認してください。
Q4. 従業員の同意は必要ですか?
スキームにより異なります。事業譲渡では個別の移籍調整が必要になることがあります。会社分割では労働契約承継の対応を確認します。
Q5. どの段階で弁護士・税理士に相談すべきですか?
スキームを決める前が理想です。決めた後に相談すると、手続・税務・契約上の理由でやり直しになることがあります。
9. 今日できる3つ
今日①:会社全体を渡すのか、一部事業だけ渡すのかを決める
今日②:株主名簿、借入一覧、許認可、主要契約を棚卸する
今日③:株式譲渡・事業譲渡・会社分割の3案で比較表を作る
スキーム選びは、法律だけの話ではありません。従業員を守る、取引先を守る、借入を整理する、買い手が安心して引き継ぐための設計です。
最初から一つに決めず、3案を比較したうえで、自社に合う方法を選びましょう。
