新事業進出・ものづくり補助金 事業場内最低賃金+30円要件とは|返還リスクまで含めて理解する

この記事でわかること

新事業進出・ものづくり補助金の事業場内最低賃金+30円要件について、何を満たせばよいのかどの従業員まで対象になるのか返還はどのように起こるのか実務でどう備えるべきかを分かりやすく整理します。

この補助金では、設備投資や販路開拓だけでなく、従業員の賃金水準をどう維持・改善するかも見られます。その中でも、見落としやすいのが事業場内最低賃金+30円要件です。

この要件は、賃上げ要件のように「最終年度で達成していればよい」という考え方ではありません。毎年確認されるので、途中年度の運用が甘いと返還につながる可能性があります。

「最低賃金より少し高ければいいのでは」
「正社員だけ見ればよいのでは」
「一度クリアしたら大丈夫では」
こう考えてしまうと危険です。

この記事では、この要件を返還リスクまで含めて、実務で使いやすい形に整理します。

目次

  • 事業場内最低賃金+30円要件とは何か
  • どの事業場で判定するのか
  • どの従業員まで対象になるのか
  • 返還はどんなときに起こるのか
  • 最低賃金改定をどう見込むべきか
  • シミュレーション3例
  • 申請時に気をつけたいポイント
  • 当社ができる支援
  • よくある質問

事業場内最低賃金+30円要件とは何か

この要件は、補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高いことを求めるものです。

ここでいう事業場内最低賃金とは、その補助事業を実施する事業場の中で最も低い賃金のことです。つまり、平均賃金ではありません。会社の中で一番低い時給水準を見るので、低賃金帯の設計が非常に重要です。

ここが重要

この要件は、平均賃金ではなく、最も低い賃金で判定されるという点が大事です。だからこそ、一部の低賃金帯を見落とすと危険です。

どの事業場で判定するのか

補助事業を実施する場所が1か所なら、その事業場で判定します。
一方で、補助事業を実施する事業場が複数ある場合は、その中で最も事業場内最低賃金が低い事業場で見ます。

つまり、本社は高い賃金水準でも、別の実施拠点で低い賃金帯が残っていれば、そちらが基準になります。

ケース見方注意点
実施場所が1か所その事業場で判定最低賃金帯を確認する
実施場所が複数最も低い事業場で判定拠点間の賃金差に注意

つまり、複数拠点がある会社は、一番弱いところで要件が決まると考えておいた方が安全です。

どの従業員まで対象になるのか

この要件は、原則として雇用形態にかかわらず見ます。正社員だけではありません。パート、アルバイト、契約社員なども含めて、その事業場で最も低い賃金水準が基準になります。

ただし、都道府県労働局長から最低賃金の減額特例許可を受けている労働者については、この要件の適用対象外です。

実務のポイント

「うちは正社員の賃金は高いから大丈夫」では足りません。パート・アルバイトの時給帯まで確認する必要があります。

返還はどんなときに起こるのか

この要件の大きな特徴は、毎年度確認されることです。

賃上げ要件は最終年度で達成していれば返還対象にならない考え方ですが、事業場内最低賃金要件は違います。各年度の事業化状況報告提出時点で、基準値を満たしていない年があると、その年度について返還が求められます。

返還額の考え方は、原則として補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数です。つまり、3年計画なら3分の1、5年計画なら5分の1が、未達年度ごとに返還対象になります。

事業計画年数1年未達の返還目安考え方
3年交付額の3分の1その年度分の返還
4年交付額の4分の1その年度分の返還
5年交付額の5分の1その年度分の返還

ただし、付加価値額が増加していない、かつ会社全体としてその年度の営業利益が赤字である場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、一部返還を求めない扱いがあります。

返還リスクの見方

この要件は、1回未達でもその年の返還対象です。だからこそ、申請時点から毎年の最低賃金改定を見越した設計が必要です。

最低賃金改定をどう見込むべきか

この要件が難しいのは、地域別最低賃金が毎年改定されることです。
今30円上回っていても、翌年に地域別最低賃金が上がれば、同じ賃金水準のままでは足りなくなる可能性があります。

そのため、実務では「申請時点で30円上回っている」だけでは不十分です。毎年の最低賃金改定を見ながら、一定の余裕を持って設計した方が安全です。

特に、最低賃金に近い時給帯の従業員が多い会社は、年1回の改定タイミングで一斉に見直す仕組みを決めておかないと、うっかり未達になりやすいです。

シミュレーション3例

ここでは、制度の考え方をつかみやすいように、仮の地域別最低賃金で例を置きます。

ケース1|地域別最低賃金1,120円の地域

この場合、事業場内最低賃金の基準値は1,150円以上です。
もし事業場の最低時給が1,145円なら、5円不足で未達です。

ケース2|地域別最低賃金1,020円の地域

この場合、基準値は1,050円以上です。
最低時給が1,060円なら達成ですが、翌年の地域別最低賃金が1,035円へ改定された場合、基準値は1,065円以上になるので、そのままだと未達になります。

ケース3|複数事業場がある場合

事業場Aの最低時給が1,180円、事業場Bの最低時給が1,130円、地域別最低賃金が1,100円なら、一見どちらも高く見えます。
ただし基準値は1,130円以上なので、Bはちょうど基準ラインです。翌年改定が入るとすぐ未達になりやすいため、ギリギリ運用は危険です。

ケース地域別最低賃金必要水準コメント
ケース11,120円1,150円以上5円不足でも未達
ケース21,020円1,050円以上翌年改定も見込む必要あり
ケース31,100円1,130円以上複数拠点なら最も低い事業場で判定

このように、要件自体はシンプルでも、毎年の改定と低賃金帯の管理が実務上の肝になります。

申請時に気をつけたいポイント

この要件を設計するときは、次の点に注意した方が安全です。

1.ギリギリ30円上乗せで置かない

地域別最低賃金は毎年改定されるので、ぴったり30円上乗せだと翌年に未達になりやすいです。

2.パート・アルバイトの時給帯を先に確認する

正社員の給与が高くても、最も低い賃金帯が基準になります。ここを先に見ないと危険です。

3.複数拠点なら一番低い事業場で管理する

本社だけではなく、補助事業実施場所全体で見ます。拠点差がある会社は要注意です。

4.毎年の見直しルールを決める

最低賃金改定の時期に合わせて、誰が、いつ、どの賃金台帳を確認するかまで決めておくと事故が減ります。

よくある失敗

この要件は、「申請時にクリアしていたから大丈夫」ではありません。 毎年度確認されるので、運用ルールまで決めておかないと返還リスクが残ります。

当社ができる支援

この要件で難しいのは、ルールを読むことより、自社の賃金実態をもとに、毎年未達にならない運用へ落とし込むことです。

当社では、

  • 事業場内最低賃金の現状確認
  • 複数拠点がある場合の判定整理
  • 最低賃金改定を見込んだ設計
  • 返還リスクを踏まえた安全水準の整理
  • 賃上げ要件・賃上げ特例との整合確認

まで含めてサポートしています。

「最低賃金+30円をどの水準で置けば安全か分からない」
「複数拠点のどこを見るのか迷う」
「返還リスクがどのくらいあるか整理したい」
そんな場合は、早めに整理する方が安全です。

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よくある質問

Q1. 正社員だけ30円上回っていれば大丈夫ですか?

A. いいえ。原則として雇用形態にかかわらず見ます。パートやアルバイトも含めて、最も低い賃金水準を確認する必要があります。

Q2. 途中年度で未達でも、最終年度に達成すれば問題ありませんか?

A. いいえ。この要件は毎年度確認されます。未達の年度があると、その年度分の返還対象になり得ます。

Q3. 複数拠点がある場合は平均で見ますか?

A. いいえ。補助事業を実施する事業場のうち、最も低い事業場内最低賃金で見ます。

Q4. 返還額はどう考えればよいですか?

A. 原則として、補助金交付額を事業計画年数で割った額が、その未達年度の返還目安です。

Q5. 減額特例許可を受けた労働者も対象ですか?

A. いいえ。最低賃金の減額特例許可を受けている労働者は、この要件の適用対象外です。

まとめ

事業場内最低賃金+30円要件で大切なのは、

  • 毎年、地域別最低賃金より30円以上高いこと
  • 平均ではなく最も低い賃金で見られること
  • 雇用形態にかかわらず原則対象になること
  • 未達の年はその年度分の返還リスクがあること

この4つです。

まずは、「一番低い時給」「補助事業実施場所」「最低賃金改定後の余裕幅」を一枚の表にして整理するところから始めるのがおすすめです。